雑記

プロブロガーの朝は早い。

プロブロガーの朝は早い。

午前4時、我々はキーボードを打ち込む彼の姿を目にした。

「まあ、寝てないっすね」

「深夜の方が筆が走るんですよ」

「深夜の静寂の中で頭に浮かんできた言葉を記事に落とし込むっていうか」

「あ、理解はしなくてもいいです。というかできないでしょ笑」


彼はブログを書いているようだ。

そのとき、私たちは彼に話しかけることができなかった。

ひと段落ついたのか、彼が話しかけてきた。

「あ、いたんですね。集中しすぎて気づかなかった笑」

「鬼気迫る様子だった?まあ、そうですね。込めてるんで。魂」

「よく言われますね。記事が生きているって」


彼が叩くキーボードの音には一定のリズムがあるようで、聞いていて心地がいいものだった。

「へえ、よく気が付きましたね」

「僕はブログを書くことを”奏でる”と表現することがあります」

「学生時代は軽音やってたからかな。刻んじゃうんですよね。リズム」

「さあて、ラスサビ、”奏でますか”」


ガタ!

彼が身を乗り出してディスプレイを覗いている。

普段は冷静な彼がここまで取り乱すことは珍しい。

「へえ…記事の順位が落ちてる」

「あーあ、怒らせちゃったね。僕を」

「敵対する相手を間違ったこと、身をもって教えてあげるよ」

「”くだらない超幻想”、リライトしてやんよ」


Googleの検索アルゴリズムアップデートに苦しめられるブロガーは多い。

そのことについて彼に聞いてみた。

「ああ、そんなのもありましたね」

「僕はGoogleには依存してません」

「もっと先を見てるんですよね。使ってるんですよ。DuckDuckGo」

「いずれGoogleが僕に依存するんじゃないですかね笑」


彼が書く記事はなぜこんなにも人を惹きつけるのか。

その理由を彼に尋ねた。

「記事の声を聴いてるからじゃないですかね?」

「なんていうかな。記事はすでにあるんですよ」

「僕はそれを掘り起こしているだけというか」

「”ミケランジェロは大理石からダビデ像を彫った”。そういうことです」


取材が終わりであることを彼に告げた。

「そうですか。まあ退屈しのぎにはなりましたね」

彼はディスプレイに目を向けながらそう言った。

私はお礼の言葉を言おうとしたが口をつぐんだ。

気づいたのだ。彼の目には私たちがもう映っていないということに。

彼は書き続ける。天才ゆえの孤独を抱いて。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA